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歯科の採用にAIを使う手順——求人票と面接質問の作り方、入れてはいけない情報

佐野泰喜

歯科AIナビ編集部

· 📖 約6分

歯科の採用にAIを使う手順——求人票と面接質問の作り方、入れてはいけない情報

歯科の採用でAIが役立つのは、求人票の下書きと、面接質問・評価メモの準備です。応募者の履歴書など個人情報を入れる前の確認と、合否の最終判断は人が持つ。この線引きを守れば、院長の手間は減らせます。

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テーマ: 医院経営・レセプト・人手不足対策 | すべてのテーマ

歯科の採用にAIを使うと、どこまで楽になる?

歯科の採用でAI(ChatGPTやClaudeなどの文章を作るAI)に任せやすいのは、書く作業と準備の作業です。具体的には、求人票の下書き、職種別の書き分け、面接で聞く質問のリスト、面接後の評価メモの整理です。

一方で、誰を採るかの判断、院長自身の言葉で語る部分、応募者の個人情報の扱いは、人が持ちます。この記事では、この分け方に沿って手順を説明します。

背景として、人手の確保は今後さらに難しくなると国は見ています。厚生労働省の検討会資料(中間報告案、2026年7月15日)によると、令和6年の就業歯科衛生士は149,579人で、免許登録者の45.8%です。約9割が歯科診療所に勤務しています2。2035年の必要数は約19万人〜19万4千人と推計されています2。

同じ資料は、医療従事者の確保が更に困難になることから、業務効率化・生産性向上に取り組む必要があると書いています2。採用の事務を軽くすることは、院長が応募者と話す時間を増やす手段になります。

歯科衛生士の人手不足の全体像は、歯科衛生士の人手不足とAIによる予約・事務の見直しにまとめています。

求人票の下書きは、AIに何を渡して何を出させる?

求人票は、白紙からAIに書かせないほうがうまくいきます。院長が材料を渡し、AIには「並べ替えと言い換え」を頼みます。

AIに渡す材料(院長が用意)

  • ●職種(歯科衛生士・歯科助手・受付など)と、担当する業務の範囲
  • ●給与・勤務時間・休日・研修の仕組みなど、事実として決まっていること
  • ●医院の特徴。ただし院長が実際にそう思っていることだけ
  • ●「受付や会計は担当しない」など、応募者が気にしそうな点

頼み方の例です。「次の材料から、歯科衛生士向けの求人票の下書きを作ってください。材料にないことは書かないでください。不明な点は、最後に質問として並べてください」。最後の一文が大事です。AIは足りない情報をそれらしく埋めてしまうことがあるため、埋めずに質問させます。

職種ごとに書き分けるときは、同じ材料のまま「次は歯科助手向けに。未経験者が不安に思いそうな点に先に答える形で」と頼みます。1つの材料から複数の下書きが短時間で出ます。

できあがった下書きは、人の目で確認します。確認の中心は2つです。1つは、実態とズレた表現が入っていないか。もう1つは、決められた項目が抜けていないかです。

ハローワークに求人を出す場合、2024年4月1日以降は、求人票に3つの明示が必要です。「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含みます。)」です1。AIの下書きにこれらが入っているかを、チェックリストにして見てください。

なお、求人の媒体ごとに必要な項目は異なります。出す先の最新の案内を、掲載前に開いて確認してください。

求人票の下書きを机で確認する院長室の朝の風景
求人票の下書きを机で確認する院長室の朝の風景

面接の質問と評価メモは、AIでどう準備する?

面接のたびに質問が違うと、応募者を比べにくくなります。AIで先に「質問リスト」と「見るポイント」を作っておくと、このブレを減らせます。

手順は3つ

  • ●先に、院長が「この職種で譲れない点」を3つ書く(例:患者さんへの声かけ、チームで動けるか、学び続ける意欲)
  • ●AIに「この3点を確認する質問を各2つ。具体的な場面を聞く形で」と頼む
  • ●全員に同じ質問をして、その場で答えをメモする。面接後に、メモをAIで3点ごとに整理する

整理を頼むときも、AIに点数をつけさせて合否を出させるのではなく、「事実として何を話したか」を並べさせるところまでにします。判断は院長が、並んだメモを見て行います。

AIの評価に任せる使い方には、注意点が研究で報告されています。米国の模擬採用実験(24職種、未査読のプレプリント、2026年6月改訂)では、AIが履歴書を審査するとき、自分と同じAIで書かれた履歴書を好む傾向が示されました。同じAIを使う応募者は、人が書いた応募者より、最終候補に残る確率が23%〜60%高かったと報告されています3。

これは米国の英語の実験です。日本の歯科にそのまま当てはまるとは言えません。ただ、AIに書類の優劣をつけさせると、中身とは別の癖が入りうるという実例です。書類の選別はAIに任せず、人が見る前提で使います。

採用の考え方や面接の進め方は、歯科医院のAI導入、何から始める?の「失敗しない順番」と同じです。小さく始めて、結果を人が確認します。

面接前に質問リストとメモを用意した、医院の面接スペース
面接前に質問リストとメモを用意した、医院の面接スペース

応募者の情報はAIに入れてよい? 入れてはいけない情報は?

履歴書や面接のメモは、個人情報です。AIに入れる前に、使うサービスの規約を確認してください。入力した内容が学習に使われる設定かどうか、外部に送られる範囲はどこまでか、が確認点です。

個人情報保護委員会の法令・ガイドラインのページでは、2026年11月5日の確認時点で、「令和8年11月2日施行版 新旧対照表」やQ&Aの更新(令和8年10月30日)が掲示されています4。ルールは直近も更新されているので、古い資料だけで判断せず、最新の案内を見てください。

一番安全な線引き

  • ●AIに入れない:応募者の氏名・住所・連絡先・生年月日・顔写真・履歴書の原文
  • ●AIに入れてよい:職種ごとの質問づくり、求人票の下書きなど、個人が特定されない作業
  • ●面接メモを整理させたいときは、氏名を伏せ、「応募者A」と書いてから入れる

もう1つの線引きは、院長の言葉です。「どんな医院にしたいか」「どんな人と働きたいか」は、AIに作らせた文章だと、他院と似た表現になりがちです。院長メッセージは、箇条書きのメモを自分で書き、AIには読みやすく整える作業だけを頼みます。

AIで作った文面を使うときも、医院の実態と違うことを書くと、入職後のミスマッチにつながります。盛った表現が混ざっていないか、スタッフにも1人読んでもらうと安心です。

求人票の下書きを出す前の確認5項目
求人票の下書きを出す前の確認5項目

今日・今週・来月にやることは?

いまの求人票が手元にあれば、今日から始められます。

3つのステップ

  • ●今日(15分):いまの求人票を見て、仕事の範囲・休日・給与の3つが具体的に書かれているか確かめる。足りない点をメモする
  • ●今週(1時間):メモした材料をAIに渡して、求人票の下書きを1本作る。「材料にないことは書かない」と最初に伝える。院長が読んで、事実と違う点を直す
  • ●来月:面接で聞く質問を、譲れない点3つに沿ってAIで作る。全員に同じ質問をして、応募数と面接のしやすさを前月と比べる

数字の目標は、最初は置かなくて大丈夫です。まずは「下書きにかかる時間が減ったか」「面接のあとにメモが残っているか」の2点を、自分の医院で見てください。

この記事のまとめ

歯科 採用 AI の使いどころは、求人票の下書きと面接質問・メモの整理です。決まった明示項目の確認、応募者の個人情報の扱い、合否の判断は人が持ちます。米国の実験では、AIが自分と同じAIで書かれた履歴書を好み、23%〜60%高く最終候補に残しました(未査読)。

よくある質問

Q.歯科の求人票をChatGPTで作っても問題ありませんか?

A.作ること自体は問題になりません。ただし、実態と違う表現や、必要な明示項目の抜けは院長の責任です。AIの下書きは、掲載前に人が確認してください。ハローワークの求人は、2024年4月から明示事項が3つ追加されています。

Q.応募者の履歴書をAIに読ませてもよいですか?

A.氏名や連絡先など個人が特定できる情報は入れないのが安全です。入れる場合は、利用するサービスの規約で、入力内容が学習に使われないか、外部に送られる範囲はどこまでかを先に確認してください。

Q.AIに面接の合否を判断させることはできますか?

A.おすすめしません。AIは自分と同じAIで書かれた履歴書を好む傾向が、米国の実験(未査読)で報告されています。質問づくりとメモの整理に使い、合否は院長が判断してください。

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Sanoの一言解説

論点は、採用のどこまでをAIに渡し、どこから院長が持つかの線引きです。現場では、求人票を書く時間は減っても、事実と違う文面をそのまま出すと入職後のミスマッチになり、結局は教育と再募集のコストが増えます。判断軸は3つです。事実として決まっていることだけを材料にしているか、応募者の個人情報を入れていないか、合否を人が決めているか。1つでも欠けるなら、その使い方は止めます。明日は、いまの求人票の「仕事の範囲・休日・給与」が具体的か確認し、足りない点を3つメモしてください。

参考・出典

4件
  1. [1]

    ハローワークへの求人申込み時の追加明示事項(職業安定法施行規則改正、2024年4月1日施行。厚生労働省ハローワーク)(2026-11-05 確認。新たな改正は確認できず)

    https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-hellowork/list/toyohashi/info/r060401a.html参照: 2026-11-05
  2. [2]

    歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会(第6回)資料1 中間報告(案)(厚生労働省、2026年7月15日。確定版ではない)(2026-11-05 確認)

    https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001723788.pdf参照: 2026-11-05
  3. [3]

    Xu, Li, Jiang. AI Self-preferencing in Algorithmic Hiring(arXiv:2509.00462、未査読プレプリント、2026年6月改訂)

    https://arxiv.org/abs/2509.00462参照: 2026-11-05
  4. [4]

    個人情報保護委員会 法令・ガイドライン等(令和8年11月2日施行版 新旧対照表の掲示あり。2026-11-05 確認)

    https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/参照: 2026-11-05
佐野泰喜
佐野 泰喜監修・編集長

歯科医師・MBA / 株式会社HAMIGAKI 代表取締役

歯科医師としての臨床経験をベースに、AI×歯科経営の実践研究を行う。歯科AIナビを運営し、全国の歯科医師・院長へのAI活用支援に取り組む。

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