歯科医院のAIと個人情報——入力していいAI・ダメなAIの見分け方
歯科AIナビ編集部
· 📖 約5分
歯科医院でAIに患者情報を入力する際は、氏名・生年月日・カルテ番号など個人が特定できる情報を外し、入力データを学習に使わない設定の法人向けプランを選ぶことが、個人情報保護法違反を避けるための基本になる。歯科医院で使えるAIと使えないAIの見分け方を解説する。
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歯科医院でAIに患者情報を入力すると何が問題になる?
歯科医院を含む医療機関は、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に沿って患者情報を扱う必要があります1。
個人情報保護委員会は、AIのプロンプト(AIに出す指示文)に個人情報を入力する際、利用目的の範囲内かを十分に確認するよう事業者に求めています2。
入力してはいけない情報(NGリスト)
- ●患者の氏名・生年月日・住所・電話番号
- ●カルテ番号・保険証番号
- ●個人を特定できる口腔内写真・レントゲン画像
これらをそのまま入力すると、AI提供企業のサーバーに患者を特定できる情報が渡ることになります。まず「何を入力してよいか」の線引きを知ることが最初の一歩です。
一方で、AIそのものを使わない選択も現実的ではありません。院内の言葉づかいの確認や資料作成など、患者情報を伴わない業務にはすでに活用が広がっています。問題は「AIを使うかどうか」ではなく、「どの情報を、どのAIに入力してよいか」を院内で線引きできているかどうかです。
「入力していいAI」と「ダメなAI」の見分け方——3つのチェック項目
歯科 AI 個人情報の扱いで最初に確認すべきなのは、AIの性能ではなく「契約条件」です。見分けるポイントは次の3つです。
①入力データを学習に使わない設定があるか
- ●Anthropicは商用利用規約で、顧客のコンテンツをサービス上でモデルの学習に使わないと明記しています4
- ●ChatGPT Businessは「入力データをAIの学習に利用しない設計」5、Enterpriseは「原則としてAIの学習に使用されないオプトイン形式」を採用しています5
無料版や個人アカウントは、この設定が無いか、利用規約で確認できない場合があります。契約前に管理画面や利用規約で学習設定を確認してください。
②法人向け(Business/Enterprise等)の契約か
- ●法人向けプランは管理者によるユーザー管理・権限設定・監査ログ・データ暗号化などの機能を含みます5
- ●契約主体が「スタッフ個人」ではなく「医院(法人)」になっているかを確認します
③利用目的の範囲内かを確認しているか
- ●個人情報保護委員会は、AIへの入力が利用目的の範囲内かを事業者自身が確認するよう求めています2
- ●患者に説明した利用目的(治療・会計など)を超えてAIに入力していないか、院内で定期的に見直します
AIの出力をそのまま業務に使う際は、もっともらしい誤りにも注意が必要です。ハルシネーションの仕組みと対処法は、AIの回答を鵜呑みにしないための考え方をまとめています。
個人情報保護法・医療機関向けガイダンスで押さえておくこと
医療機関向けの個人情報の扱いは「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」が基本です。2026年4月に一部改正されており、これが現行の最新版です1。
個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月発表)は、2026年9月21日時点でも改定されておらず現行です2。プロンプトへの入力が利用目的の範囲内かを事業者自身で確認するよう求める内容です。
個人情報保護法自体も2026年(令和8年度)に改正されています3。施行日や歯科医院のような中小事業者への具体的な適用範囲は今後の公表を確認する必要がありますが、法改正が進んでいる事実は押さえておいてください。院内ルールは一度作って終わりではなく、改正の動きに合わせて見直す前提で運用すると後から慌てずに済みます。
AIをこれから院内に取り入れる場合の全体の進め方は、歯科医院のAI導入の進め方で解説しています。
国内の歯科医院での安全な使い方——匿名化・学習オフ・人の確認
国内の歯科クリニックの実務では、患者を特定できる情報を「Aさん」「次回来院予定の患者さん」のように匿名化してAIに入力する運用が紹介されています6。
匿名化の実例
- ●氏名は「Aさん」、来院予定は「次回来院予定の患者さん」のように置き換える
- ●カルテ番号・電話番号はそもそも入力しない
AIが作った患者向けの文章(治療説明・案内文など)は、送る前に必ず歯科医師または担当者が内容を確認する体制も合わせて紹介されています6。匿名化と人の確認を組み合わせることで、AIの効率と患者情報の保護を両立させる運用になります。
匿名化した状態でAIに的確な指示を出す書き方は、歯科臨床で使えるプロンプト技法10選で具体的に解説しています。
今日・今週・来月にやること
今日(5分): 院内で使っているAIが個人契約か法人契約か、契約者一覧を確認してください。
今週(1時間): 患者情報の匿名化ルール(「Aさん」表記など)をスタッフ全員に共有してください。
来月: 学習オフ設定の法人向けプラン(Business/Enterprise等)への切り替えを検討し、見積りを取ってください。
この記事のまとめ
歯科医院がAIに患者情報を入力する際は、氏名やカルテ番号などの特定情報を外し、入力データを学習に使わない法人向けプランを選ぶことが、個人情報保護法に沿った見分け方の軸になる。
よくある質問
Q.ChatGPTの無料版に誤って患者の名前を入力してしまったら、どうすればいいですか?
A.そのAIでの個人情報の入力をただちに控えてください。今後は学習オフ設定の法人向けプランに切り替え、匿名化(「Aさん」表記など)を徹底することが実務的な対応です(5)。
Q.口腔内写真をAIに読み込ませるのは個人情報保護法違反になりますか?
A.氏名等とセットで扱えば個人情報に該当しえます。学習に使わない設定の法人向けAIを使い、患者を特定できる形で保存・共有しないことが基本です(1)。
Q.法人向け(Business/Enterprise)プランなら、患者情報を入力しても問題ありませんか?
A.学習に使われにくい設定ではありますが(4、5)、利用目的の範囲内かの確認や院内の匿名化ルールは別途必要です。契約プランだけで解決するわけではありません(2)。
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①論点提示:「入力していいAI」の判断は、機能の便利さではなく、学習に使われないとどこまで保証されているかで決まります。
②現場の摩擦:私が見てきて気になるのは、院長が法人向けプランを契約しても、スタッフが個人の無料アカウントで別のAIを使ってしまうケースです。便利さを優先してルールを飛ばすと、契約と現場の運用がずれていきます。
③判断軸:①契約が個人か医院(法人)か、②学習オフの設定を管理画面で確認できるか、③匿名化のルールをスタッフ全員が知っているか。この3つが揃わない限り、高機能でも「ダメなAI」の使い方になってしまいます。
④次の一手:明日の朝礼で、今使っているAIが個人契約か法人契約かをスタッフ一人ずつに確認してください。ここが揃っていないと、ルールを作っても守られません。
参考・出典
6件- [1]
医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(2017年4月制定・2026年4月改正。2026-09-21確認時点で現行最新版)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/参照: 2026-09-21 - [2]
生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(2023年6月2日発表。2026-09-21確認時点で改定なし=現行)
https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/参照: 2026-09-21 - [3]
令和8年度改正個人情報保護法について(2026-09-21確認)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/r8kaiseihogohou参照: 2026-09-21 - [4]
Anthropic Commercial Terms of Service(2026-09-21確認)
https://www.anthropic.com/legal/commercial-terms参照: 2026-09-21 - [5]
ChatGPTに個人情報を入力するリスクとは?事例からセキュリティ対策を解説(2026年2月発表)
https://biz.kddi.com/content/column/smartwork/what-is-chatgpt-privacy/参照: 2026-09-21
歯科医師・MBA / 株式会社HAMIGAKI 代表取締役
歯科医師としての臨床経験をベースに、AI×歯科経営の実践研究を行う。歯科AIナビを運営し、全国の歯科医師・院長へのAI活用支援に取り組む。







