患者説明のAI作成で気をつける表現——「治る」「必ず」の言い換え集
歯科AIナビ編集部
· 📖 約6分
患者説明をAIで作成するときは、「治る」「必ず」「絶対」などの断定を使わない指示を先に入れ、院長が最終確認します。AIの下書きは言い切りが多いためです。厚生労働省のガイドラインを基準にした言い換え例と、入力してよい情報の線引きをまとめます。
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患者説明をAIで作成すると、なぜ断定表現が混ざるのか?
AIの下書きは、読みやすさを優先して言い切る傾向があります。「この治療で改善します」「安心してください」のように、患者さんに寄り添った文ほど断定になりがちです。これは筆者の見立てで、数値で測った話ではありません。
厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)は、「絶対安全な手術です!」「どんなに難しい症例でも必ず成功します」を、医学上あり得ない内容の虚偽広告の例に挙げています1。「比較的安全な手術です。」も、何と比べて安全か分からないため誇大広告の例です1。
ここで大事なのは、どこに出す文章かです。医療機関の内部の掲示や、院内で配布するパンフレットは、受け手が通常すでに受診している患者さんなので、広告とはみなされないと整理されています1。一方、ホームページやSNSは規制の対象です1。
院内だけで使う文章でも、断定は避けるのが安全です。治療の結果は人によって違い、説明と違う結果になったときに、言い切った文面が残ってしまうためです(これは編集部の考えです)。
たとえば、保険の説明で「ここまでは保険で受けられます」と書くのは事実の説明です。一方、自費の説明で「この方法なら長持ちします」と書くと、効果の保証に読めます。AIはこの差を意識せずに書くため、人が線を引きます。
断定表現は、どう言い換えればよいのか?
言い換えの基本は3つです。結果は「期待できる」と書く。個人差を書く。やることと起こりうることを具体的に書く。以下は編集部が作った例で、ガイドライン本文にある例文ではありません。
言い換えるときは、患者さんが知りたいことを外さないのがコツです。「治りますか」と聞かれて、「分かりません」では不親切です。「多くの方は、このくらいの期間で変化を感じます。ただ、個人差があるので、来週の診察で確認しましょう」のように、次に何をするかまで書くと、断定しなくても安心感は残ります。
言い換えの例
- ●「必ず治ります」→「多くの場合、症状の改善が期待できます。経過には個人差があります」
- ●「絶対に安全です」→「リスクを減らすために、○○を行っています。起こりうることは△△です」
- ●「痛くありません」→「痛みを減らすために麻酔を使います。感じ方には個人差があります」
- ●「当院が一番です」→「○○の設備があります」と、事実だけを書く
- ●「万全の体制です」→「感染対策として○○を実施しています」と、やっていることを書く
「万全の安全管理体制」は、客観的な事実として評価できない表現のため、誇大広告として認められないとガイドラインに書かれています1。「日本一」のような比較優良の表現も認められません1。
「この治療は効果が高く、おすすめです」も要注意です。科学的な根拠が乏しいのに有効性を強調して誘導するものは、誇大広告の例とされています1。根拠を示せない文は、選択肢の説明に直す方が無難です。
AIに患者さんの情報を入力してもよいのか?
氏名、生年月日、カルテ番号など、個人が特定できる情報は入力しない運用が安全です。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、プロンプト(AIに出す指示文)に個人情報を入れる場合、利用目的の範囲内かを確認するよう事業者に求めています2。
患者説明の下書きに、個人情報は要りません。「歯周病の初期、40代、喫煙なし」のように、特定につながらない条件だけで下書きは作れます。それでも珍しい症例や、地域が限られる情報は、組み合わせると誰か分かることがあります。迷うときは入力しない方を選びます。
入力の線引きは、歯科医院のAIと個人情報の注意点で詳しく整理しています。
断定しない下書きを出してもらう指示文は?
指示文の最初に禁止事項を書くと、下書きの段階で断定が減ります。次の4点を、毎回貼り付けて使います。
コピーして使える禁止事項
- ●「治る」「必ず」「絶対」「日本一」は使わない
- ●効果は「期待できる」「個人差がある」と書く
- ●利点と同じ分量で、リスクと費用も書く
- ●専門用語は、中学生が分かる言葉で言い換える
AIが出した文は、そのまま使いません。断定が残っていないか、数字や制度の説明が正しいかを、院長が読んで確かめます。AIが事実でないことをもっともらしく書く現象は、ハルシネーションの基本で説明しています。
ホームページに載せる文は、院内用より慎重に見ます。広告の確認手順は、院内ポスターの医療広告チェックも参考になります。
今日・今週・来月にやることは?
最初の一歩は、自院の説明文に断定が残っていないかを見ることです。
3つのステップ
- ●今日(15分):患者向けの説明文を3枚選び、「治る」「必ず」「絶対」「一番」を検索して赤で囲む
- ●今週(1時間):赤で囲んだ文を、上の言い換えの型で直す。AIには直した文を見せ、同じ型で他の文も下書きさせる
- ●来月:禁止事項4点を院内の共有メモにして、新しく作る説明文は全て、院長が最終確認する流れにする
ガイドラインは改正されることがあります。使う前に、厚生労働省の医療広告規制のページで最新版を確認してください3。
この記事のまとめ
患者説明のAI作成では、「治る」「必ず」など断定表現を避ける指示を先に入れる。厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)は「絶対安全」「必ず成功」を虚偽広告の例とし、院内配布物は通常広告に当たらないとする。
よくある質問
Q.院内で配る説明資料にも、医療広告ガイドラインは適用されますか?
A.ガイドラインでは、院内の掲示や院内で配布するパンフレットは、通常は広告とみなされないと整理されています(1)。ホームページやSNSは対象です。院内用でも断定は避けると安全です。
Q.患者説明の下書きに、患者さんの名前を入れてもよいですか?
A.入れない運用が安全です。個人情報保護委員会は、プロンプトに個人情報を入れる場合、利用目的の範囲内かを確認するよう求めています(2)。下書きに名前は要りません。
Q.AIに「治るとは書かないで」と指示すれば、確認は不要ですか?
A.不要にはなりません。指示で断定は減りますが、ゼロにはなりません。数字や制度の説明が正しいかも含めて、院長が読んで確かめてから使います。
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本質は「AIに上手く書かせること」ではなく、「断定が残らない確認の流れを作ること」です。現場では、親切に書いた文ほど言い切りになり、忙しい日は確認が抜けます。時短と確認の手間はトレードオフで、確認を省くと、後から説明と結果の食い違いが起きて、スタッフが対応に追われます。判断軸は3つです。出す先が院内か、ホームページか。結果ではなく手順とリスクを書けているか。院長が1枚3分以内で見直せる量か。まず自院の説明文を3枚選び、断定の言葉を探して数えてください。数が出ると、院内で決めやすくなります。見直しの担当は院長か、院長が指名した1人に固定すると続きます。
参考・出典
3件- [1]
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(厚生労働省。令和8年3月30日最終改正。2026-10-22 確認)
https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf参照: 2026-10-22 - [2]
生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会。2023年6月2日。2026-10-22 確認時点でページ公開中)
https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/参照: 2026-10-22 - [3]
医療法における病院等の広告規制について(厚生労働省。令和8年3月30日の改訂が掲載。2026-10-22 確認)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html参照: 2026-10-22
歯科医師・MBA / 株式会社HAMIGAKI 代表取締役
歯科医師としての臨床経験をベースに、AI×歯科経営の実践研究を行う。歯科AIナビを運営し、全国の歯科医師・院長へのAI活用支援に取り組む。







