歯科のLINE自動応答をAIで作る手順——問い合わせを減らす設定と、任せてはいけない質問
歯科AIナビ編集部
· 📖 約6分
歯科医院のLINE自動応答は、LINE公式アカウントの無料の応答メッセージで始められ、AIチャットボット(β)を使うと言い回しの違う質問にも返せます。ただし診療内容の相談は人に引き継ぐ設計が前提です。手順と費用、注意点をまとめます。
テーマ: 患者対応・予約・LINEの自動化 | すべてのテーマ
歯科の「LINE自動応答 AI」で、できること・できないことは?
LINE公式アカウントには、2つの自動返信の仕組みがあります。1つ目は従来の応答メッセージ、2つ目は2025年11月に始まったAIチャットボット(β)です。
応答メッセージは、決めたキーワードが届いたときに決めた文章を返す仕組みです。LINEヤフーの解説では、完全一致が必要だったと説明されています2。「診療時間」と送られれば返せますが、「何時までやってますか」では反応しないことがあります。
AIチャットボット(β)は、事前に登録したQ&Aの中から、質問の意味に近いものをAIが選んで返す機能です。キーワードの部分一致でも文脈を読んで回答できるとされています2。AIが自由に文章を作るのではなく、医院が用意した答えを選ぶ形です。
該当する答えが無いときは「適切な回答がありません」と返す仕様です2。つまり、答えを用意していない質問には、AIは答えません。
自動応答に向く質問・向かない質問
- ●向く:診療時間、休診日、アクセス、駐車場、初診の持ち物、予約の変更方法
- ●向く:初診の流れ、保険証の確認方法など、答えが毎回同じ質問
- ●向かない:「この痛みは何ですか」「この治療は必要ですか」など、個別の症状や診断に関わる質問
- ●向かない:料金の個別見積もり、クレーム、キャンセル料のトラブル
向かない質問は、自動応答で答えさせず、スタッフに引き継ぐ案内を返す設計にします。AIの役割は「答えること」ではなく「人が答えるべき質問と、そうでない質問を分けること」だと考えると、失敗しにくくなります。
費用はいくら?無料でできる範囲と、AIチャットボット(β)の条件
LINE公式アカウントの料金は3プランです。公式の料金ページによれば、コミュニケーションプランは月額0円で無料メッセージ200通、ライトプランは月額5,000円(税別)で5,000通、スタンダードプランは月額15,000円(税別)で30,000通です1。
自動応答メッセージの機能は無料で使えます。応答メッセージとあいさつメッセージは、メッセージ通数の数に入りません1。まず応答メッセージで始めるなら、追加の費用はかかりません。
AIチャットボット(β)は条件が違います。実際に患者へ返すには、有料の「チャットProオプション」(月額3,000円・税別)の契約が必要です。Q&Aの登録と動作確認は、未契約のアカウントでも使えます2。
設定は、パソコンのWeb版管理画面からのみ行えます2。また、提供対象外の業種・アカウントがあり、LINEヤフーが判断すると書かれています2。医療機関で申し込めるかは、契約前に管理画面か窓口で確認してください。
料金は2026年10月1日に追加メッセージ料金が改定されています1。確認日は2026年10月12日です。実際に契約する前に、必ず公式ページで最新の金額を見直してください。
応答メッセージとAIチャットボット(β)の違い
- ●応答メッセージ:無料。決めたキーワードに完全一致で返す。言い回しの違いには対応しにくい
- ●AIチャットボット(β):チャットProオプションが必要。言い回しが違っても、近いQ&Aを選んで返す
- ●どちらも、答えは医院が事前に用意する。AIが診療内容を自分で考えて答えるわけではない
設定の手順は?Q&Aを作ってからAIに読ませる
順番を間違えないことが大切です。ツールを触る前に、答えの元になる資料を作ります。
ステップ1は、問い合わせの棚卸しです。直近1か月に電話やLINEで受けた質問を、スタッフに書き出してもらいます。同じ質問が3回以上あるものから、Q&Aの候補にします。
ステップ2は、答えの文章づくりです。診療時間や初診の流れは、院内の案内資料をそのまま使えます。文章の下書きにChatGPTなどを使うなら、患者の名前や症状は入れず、医院の公開情報だけを渡します。個人情報の線引きは、歯科医院のAIと個人情報で整理しています。
ステップ3は、AIチャットボット(β)へ登録です。PDFや画像などの資料をアップロードすると、AIがQ&Aを自動で作ります。テンプレートでの個別作成やCSVでの一括登録もできます。作られたQ&Aは、管理画面で追加・編集できます2。
自動で作られたQ&Aは、必ず院長か担当者が全件読んでください。診療時間の言い間違いや、古い料金が混ざっていないかを確認する工程です。
ステップ4は、「引き継ぎ」の返信を作ることです。診療内容の相談や個別の見積もりには、「内容を確認し、診療時間内にスタッフから返信します」という文章を返すようにします。緊急の症状が書かれていそうな場合は、電話での連絡を案内する一文も入れます。
ステップ5は、院内テストです。スタッフ全員が、実際に患者が書きそうな文章を10個ずつ送ります。答えが外れたものは、Q&Aを直すか、引き継ぎに回します。返信後のフィードバックを管理画面のグラフで見て、評価の低い回答を見直す機能もあります2。
医療広告と個人情報で、気をつけることは?
厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」は、2026年3月30日に最終改正されています。同時に、ウェブサイト等の事例解説書は第6版になり、SNS・動画の広告事例と、自由診療の限定解除の要件を満たしていない事例が拡充されました4。2026年10月12日の確認時点で、これより新しい版は見つかりませんでした。
LINEの自動応答が広告に当たるかどうかは、今回の調査ではガイドライン本文まで確認できていません。そのため、当たる・当たらないを断定しません。個別の患者への回答と、友だち追加を誘う配信は性質が違うので、迷う場合は保健所かガイドライン本文で確認してください。
安全側に倒す工夫は2つあります。1つ目は、自動応答の文章に、治療の効果や費用の安さで誘う表現を入れないことです。AIで作った院内掲示物の医療広告チェックの5項目を、そのまま使えます。
2つ目は、患者の氏名や症状を、AIに入れる設計にしないことです。AIチャットボット(β)は、事前に登録したQ&Aから選ぶ仕組みなので、患者の情報をQ&Aに入れる必要はありません。「痛みの相談はスタッフに引き継ぐ」という設計にすれば、症状の文章がAIの回答に使われる場面を減らせます。
歯科でのチャットボット研究をまとめた2026年のレビュー論文(International Arab Journal of Dentistry)は、用途として患者とのコミュニケーションが83%、予約調整が76%を占めるとしています。一方で、課題として自然言語理解の限界、データのプライバシー、標準化の欠如を挙げています5。抄録の範囲の確認です。
実際にどのくらい減る?数字の読み方
電話件数がどれだけ減るかを測った査読研究や公的調査は、2026年10月12日の検索では見つかりませんでした。使える数字は、LINE拡張ツール「Lステップ」の提供元が公開している導入事例です。
全国8院の自費診療専門歯科医院では、予約管理の工数を約40%削減し、無断キャンセル率を約20%改善したと紹介されています3。福岡の矯正歯科クリニックでは、問い合わせの約7割が自動で対応可能になったと書かれています3。
ただし、これらは販売側の事例紹介で、算出の条件は公開されていません。自院で同じ数字になる保証はありません。事例はAIチャットボット(β)単体の効果ではなく、拡張ツールを使った運用全体の話です。
数字を参考にするなら、「何を減らしたいか」を先に決めて、自院で測ることをおすすめします。電話の件数ではなく、「診療時間・アクセス・持ち物」の3種類の質問が何件あるかを、1週間数えるだけで十分です。
予約やキャンセルの連絡を自動化したい場合は、歯科の予約リマインド自動化の費用と効果の比較も参考になります。術後の連絡については、術後フォローをLINE+AIで自動化した国内の実例があります。
今日・今週・来月にやること
いきなりAIを入れる必要はありません。無料の応答メッセージで始めて、足りなくなってからAIチャットボット(β)を検討するのが、費用の面でも安全です。
3つのステップ
- ●今日(15分):直近1週間の電話・LINEの質問を、スタッフに5件書き出してもらう
- ●今週(1時間):その中の答えが毎回同じ質問3件を、応答メッセージに登録する。診療内容の相談には「スタッフから返信します」の文章を返すようにする
- ●来月:Q&Aの登録と動作確認を管理画面で試し、チャットProオプション(月額3,000円・税別)を契約するかを、院内テストの結果で決める
AIチャットボット(β)は機能名のとおりβ版で、仕様が変わる可能性があります。使う前に、LINEヤフーの公式ページで最新の条件を確認してください。
この記事のまとめ
歯科のLINE自動応答をAIで作るには、無料の応答メッセージから始め、AIチャットボット(β)は月額3,000円(税別)のチャットProオプションで実稼働させる。診療内容の相談は人に引き継ぐ設計にし、Q&Aは全件を院内で確認する。
よくある質問
Q.歯科医院のLINE自動応答は無料でできますか?
A.応答メッセージは無料で、メッセージ通数にも数えられません(1)。AIチャットボット(β)で患者に返すには、月額3,000円(税別)のチャットProオプションが必要です(2)。
Q.AIチャットボットが、診療について間違った答えを返すことはありますか?
A.AIは事前に登録したQ&Aから選んで返し、該当が無ければ「適切な回答がありません」と返す仕様です(2)。ただしQ&Aの内容が誤っていれば誤った答えになるため、全件の確認が必要です。
Q.LINEの自動応答は医療広告ガイドラインの対象になりますか?
A.今回の調査では、ガイドライン本文で確認できていません。個別回答と不特定多数への配信は性質が異なるため、迷う場合は保健所に確認してください。2026年3月30日に最終改正されています(4)。
歯科AIナビ 公式LINE
「うちの医院では何から始めればいい?」に、歯科医師が答えます
新着記事・セミナー案内・院内でそのまま使えるプロンプト集をLINEでお届けします。登録は無料です。
LINEで無料登録する →
本質は「AIに答えさせること」ではなく、「人が答えるべき質問を人に渡す線引き」の設計です。時短を狙って診療内容まで自動返信に任せると、答えの責任を誰が持つのかが曖昧になり、院内の運用が止まります。判断軸は3つです。答えが毎回同じ質問か、間違えたときの修正が5分以内に終わるか、患者の症状を入力させなくて済むか。この3つを満たす質問から始めると失敗しにくいです。まずは直近1週間の質問を5件書き出して、どれを自動にしてよいかをスタッフと決めてみてください。
参考・出典
5件- [1]
LINE公式アカウント 料金プラン(LINEヤフー for Business。2026-10-12 確認。2026年10月1日に追加メッセージ料金を改定済み)
https://www.lycbiz.com/jp/service/line-official-account/plan/参照: 2026-10-12 - [2]
LINE公式アカウント AIチャットボット(β)の解説(LINEヤフー for Business。2025年11月12日公開。2026-10-12 確認)
https://www.lycbiz.com/jp/column/line-official-account/service-information/ai-chatbot参照: 2026-10-12 - [3]
歯科医院向けLステップ活用事例(Lステップ公式ブログ。2026年4月28日公開。2026-10-12 確認)
https://linestep.jp/2025/09/03/lstep-line-dental-clinic/参照: 2026-10-12 - [4]
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)について(厚生労働省 事務連絡。2026年3月30日。2026-10-12 確認時点でこれより新しい版は見つからず)
https://www.mhlw.go.jp/content/001683596.pdf参照: 2026-10-12 - [5]
The Role of AI Chatbots in Dentistry: A Systematic Review(International Arab Journal of Dentistry 17(2)、2026年。抄録のみ確認)
https://e-journals.usj.edu.lb/iajd/vol17/iss2/15参照: 2026-10-12
歯科医師・MBA / 株式会社HAMIGAKI 代表取締役
歯科医師としての臨床経験をベースに、AI×歯科経営の実践研究を行う。歯科AIナビを運営し、全国の歯科医師・院長へのAI活用支援に取り組む。







